ドラッグストアの虫よけの棚の前で、迷ったことはないでしょうか。
同じブランドで5%、10%、30%が並んでいる。何が違うのかは書いていない。とりあえず一番濃いものを買っておけば間違いないだろうと手に取る。私も長いあいだ、そうしていました。
いまは、棚の前で迷いません。見る場所が2つに決まったからです。濃度の数字ではなく、その2つを見れば30秒で決まります。そして「これで足りているのか」という、山に入ってからの落ち着かなさも消えました。
添付文書をちゃんと読んで分かったのは、濃度の欄と効能の欄は、まったく別のことを言っているということでした。
結論:30%を使っているが、「強いから」ではない
いま猟期に使っているのは、ディートが30%配合されたタイプです。ただ、選んだ理由は強さではありません。
- 山にいる時間が長いから。濃度で変わるのは、主に効いている時間
- 効能の欄にツツガムシが入っているから。ここが草むらに入る人には効いてくる
逆に言えば、短時間の外出なら濃い必要はありません。濃度を上げると使える年齢が変わるので、上げれば上げるほど良いというものでもありません。
1. 濃度で選んでいるのは、塗り直しの回数
ディートは、濃度が高いほど効き目が「強く」なるというより、効いている時間が長くなるものだと理解しています。
私が使っている製品は、添付文書に「1回使用による忌避効果の持続時間は、概ね5〜8時間」と書かれています。
つまり濃度を選ぶことは、実質的には「何時間ごとに塗り直しに戻るか」を選ぶことです。
罠の見回りで半日藪に入るなら、途中で塗り直す前提の装備にしたくありません。手が汚れていることも、ザックを下ろせない場所にいることもあります。だから長いほうを選んでいます。
ただし、これは「塗ったら8時間放っておける」という意味ではありません。添付文書にも、経過時間や発汗の状況を踏まえて適宜使い直すように、と書かれています。汗をかく季節の山では、表示の下限で考えておくくらいがちょうどいいと思っています。
濃度が低いほうがいい場面もある
だから、低い濃度の製品が劣っているわけではありません。
庭に出る、犬の散歩に行く、夕方に少し外にいる。そのくらいの時間なら、濃いものを選ぶ理由がありません。むしろディートは濃度が上がるほど使用できる年齢と回数が制限されるので、家族で共有するなら低いほうが都合がいいこともあります。
「濃度は強さの目盛りではなく、時間の目盛り」。そう考えるようになってから、選ぶのが楽になりました。
2. 濃度より先に見るのは、効能の欄
ここが本題です。
虫よけには、その製品が「どの虫に対して忌避を主張しているか」の欄があります。そこに載っていない虫については、その製品は何も言っていません。
私が使っている製品の効能は、次のとおりです。
- 蚊、ブユ(ブヨ)、アブ
- マダニ、イエダニ、ノミ
- サシバエ、トコジラミ(ナンキンムシ)
- ツツガムシ
この最後のひとつが、山に入る人にとって大きい。

以前ディートが使えない人はどうするかで、家族と入る日に使っているイカリジンの製品を紹介しました。あちらの適用害虫を並べてみると、ツツガムシとサシバエが入っていません。代わりにヌカカとヤマビルが入っています。
どちらが優れているという話ではありません。守備範囲が違うだけです。ヒルの出る沢筋に入るならイカリジンのほうに分がありますし、草むらを漕ぐならディートの側にツツガムシがある。
私が猟期に30%を手放さないのは、濃度より、この一行があるからです。
逆に、ヒルの出る沢筋に入る日と、家族を連れて行く日は、こちらに持ち替えています。同じ理由で、山に置いている虫よけは1本ではありません。
天使のスキンベープミスト プレミアム(イカリジン15%・200mL×2本)
適用害虫にヤマビルが入っているのがこちらを持つ理由。ディート30%の側には無い。あわせて年齢と使用回数の制限がないので、子どもを連れて行く日に玄関で迷わなくて済む。防除用医薬部外品。ツツガムシは入っていないので、猟期の草むらはディートのままにしている。
ツツガムシのこと
ツツガムシはダニの仲間で、その幼虫に刺されることで起こるのがツツガムシ病です。国内でも毎年、患者の報告があります。刺し口ができて、発熱や発疹が出るのが特徴とされています。
やっかいなのは、刺されたことに気づきにくいことです。マダニのように体にくっついているのが見えるわけではありません。草むらや藪に入る人が刺されるので、罠の見回りをしていれば無縁ではいられません。
山に入ったあとに発熱や発疹が出たら、医療機関を受診してください。その際、いつ・どこの山に入ったかを必ず伝えてください。ツツガムシ病にもマダニ媒介感染症にも潜伏期間があるため、入山から数週間は体調の変化に注意してください。この記事は個人の対策の記録であって、診断や治療の指針ではありません。
3. ツツガムシは、塗る場所が違う
気づきにくいのですが、私が使っている製品の添付文書には、ツツガムシのときだけ別の用法が書かれています。
ほかの虫は「肌の露出面にスプレーする」ですが、ツツガムシの場合は「肌の露出面および履物やズボンの裾等にまんべんなくスプレーする」となっています。
足元から来る、ということです。だから履物と裾が指定されています。
さらに、次の2つも書かれています。
- 薬剤だけに頼らず、シャツ・ズボン・長靴等を使用し、肌を露出しないようにすること
- ツツガムシは見えにくいので、生息していそうな場所に立ち入る前に塗布すること
これはマダニ対策とまったく同じ考え方です。服で塞いでから、残ったところに薬を使う。そして山に入る前に済ませる。順番が逆になっている人が多いところだと思います。
4. 30%を使うなら、知っておくこと
12歳未満には使えない
これは製品にはっきり書かれています。「本品はディート濃度が高いので、12歳未満の小児には使用しないこと(小児にはディート濃度が12%以下の製品を使用すること)」。
濃度を上げるということは、使える相手が狭くなるということでもあります。家族で山に入るなら、この1本だけでは足りません。
腕時計とザックに、かけない
私はこれで一度ひやりとしました。腕時計などのプラスチック製品は変色のおそれがあると注意書きにあります。手首に吹こうとして、時計をしたままだったことがあります。
衣類についても、繊維の種類によっては変質する場合があり、合成繊維は変質しやすいとされています。山の装備は化繊だらけなので、服の上からかけるときは、かける場所を選んだほうがいいです。
火気に注意する
エタノールを含みます。火気厳禁です。塗ってすぐ焚き火に近づくような使い方はしないでください。
顔には直接吹かない
目や口の周囲、粘膜や傷口には使いません。顔と首筋は、一度手のひらにスプレーしてから塗るのが定められた使い方です。腕や足は10〜15cm離してスプレーします。
サラテクトミスト リッチリッチ30(200mL)
猟期に山へ入る日はこれ。ディート30%で、表示上の持続はおおむね5〜8時間。半日藪にいても塗り直しに戻らずに済むのが選んでいる理由。効能欄にマダニとツツガムシの両方が入っているのが、草むらを漕ぐ人間には大きい。第2類医薬品。12歳未満には使えないので、家族と入る日は成分の違うものを別に持っている。
この製品は第2類医薬品です。用法・用量および使用上の注意は、必ず製品の添付文書に従ってください。漫然とした使用を避け、蚊やブユなどが多い戸外での使用など、必要な場合にのみ使用することとされています。肌に異常を感じたときは直ちに使用を中止してください。本記事は運営者個人の使い方の記録であり、効能を保証するものではありません。
まとめ
- 濃度で選んでいるのは、強さではなく塗り直しの回数。短時間の外出なら濃くする理由はない
- 濃度より先に効能の欄を見る。草むらに入るならツツガムシが入っているかどうかで変わる
- ツツガムシは足元から来る。履物と裾にも塗り、服で肌を塞ぎ、入る前に済ませる
虫よけは、数字の大きいものを選べば安心という買い方をしがちです。ただ山では、どの虫に対して何と書いてあるかのほうが、ずっと効いてきます。
見る場所が「持続時間」と「効能の欄」の2つに決まってから、棚の前で悩まなくなりました。値段の高いほうを何となく選ぶこともなくなりました。
それ以上に大きかったのは、山に入ってからの落ち着きです。草を漕いでいる最中に「これで足りているんだろうか」と考えなくて済む。足りているかどうかは、家を出る前に決着がついているからです。虫のことを考えずに獲物のことだけ考えられるのは、思っていたよりずっと楽でした。
注意していただきたいこと
- 本記事は運営者個人の使い方の記録であり、診断・治療の指針ではありません
- 医薬品の用法・用量および使用上の注意は、必ず製品の添付文書に従ってください。年齢による制限は製品ごとに異なります
- 咬まれたあとに発熱などの体調変化があれば、山に入った日と場所を伝えたうえで医療機関を受診してください。ツツガムシ病もマダニ媒介感染症も、国内で報告があります
- 狩猟は、狩猟免許および狩猟者登録を受けたうえで、鳥獣保護管理法その他の関係法令および各都道府県の定めるルールの範囲内で行ってください




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