鹿肉ジャーキーは70℃で十分|それでも90℃まで出せる乾燥機にした理由

台所に置いたKwasyoのステンレス製フードドライヤー ジビエを旨く食う
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ジャーキーは、買うと高い。小さな袋で数百円、原材料の欄には自分では入れないものが並んでいます。トレーニングをしているので、夜に何か食べるなら中身は自分で決めたい。それなのに、結局コンビニで似たようなものを買って帰っていました。

冷凍庫には、鹿のモモ肉がブロックで入っているのにです。

いまは、間食が自分で作ったものになりました。モモ肉を薄く切って並べて、あとは機械が乾かしてくれる。味も、入れるものも自分で決められます。犬にも、同じ肉を味をつけずに乾かしてやっています。買って帰る理由が、まるごと無くなりました。

使っているのはフードドライヤーという乾燥機です。そして選ぶときに見たのは、乾燥の力ではなく出せる温度の幅でした。

結論:ジャーキーは70℃で足りる。90℃は「その上」の話

  • 加熱の基準は「中心部75℃で1分以上、またはこれと同等以上」。この「同等以上」は温度と時間の組み合わせで、70℃なら3分、63℃なら30分です
  • だから70℃で十分です。ジャーキーは何時間も回す料理なので、時間の側でとっくに足りています
  • それでも90℃まで出せると、仕上げに温度を上げるという逃げ道が持てる。厚く切った日や、人に食べてもらう日に効きます
  • そして30〜90℃という幅が、そのまま用途の幅になります。犬のおやつ、野菜、果物、麹の甘酒まで同じ一台です

私が使っているのはKwasyoの6層フードドライヤー(ステンレス製・30〜90℃)です。ジビエ用の道具として売られているものではありません。

1. ジャーキーにするのは、いつもモモ肉

部位はモモで固定しています。理由は2つあります。

ひとつは大きく取れること。乾かすと縮むので、小さく切った肉から作ると食べ応えのないものになります。モモなら、最初から大きいまま薄く切り出せます。もうひとつは筋が少ないこと。乾かしても筋は柔らかくなりません。噛み切れないジャーキーになる原因は、ほとんどこれです。脂が少なく、筋が通っていない——モモは、乾かす前提で見るといちばん素直な部位でした(部位ごとの性格は鹿肉の部位別・失敗しない食べ方にまとめてあります)。

逆に、解体のときに出た端肉はジャーキーにしません。あれはカレーや煮込みに回します。筋やスジのある肉は、時間をかけて煮たほうがはるかにおいしくなるからです。部位ごとに行き先が決まっていると、1頭を最後まで使い切れます。

2. 70℃で十分なのは、時間の側で足りているから

野生の鹿や猪の肉には、E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌のリスクがあります。だから中心部を75℃で1分以上加熱することが言われます。ここまでは、ジビエをやっていれば必ず聞く話です。

ただし、この基準には続きがあります。正確には「75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の効力を有する方法」です。そして「同等以上」の中身は、温度と時間の組み合わせです。

  • 63℃なら30分
  • 70℃なら3分
  • 75℃なら1分

(内閣府食品安全委員会が示している条件です。もともとは63℃30分が基準で、温度が上がるほど必要な時間が短くなります)

つまり、75℃を超えなければ危ない、という話ではありません。低い温度でも、そのぶん長く加熱すれば同じことです。そしてジャーキーは、薄く切った肉を何時間も熱風の中に置きっぱなしにする料理です。庫内が70℃なら、肉の中心も早い段階でそこに近づき、そこから3分どころではない時間が過ぎていきます。

だから、70℃で問題なく作れます。実際、私はいつもその温度帯で回しています。乾燥そのものにも、高い温度は要りません。高温で一気にやると表面だけが先に固まって、中の水分が出られなくなるからです。低めの温度で時間をかけたほうが、きれいに乾きます。

では90℃は何のためにあるのか。上限が高いことは、そのまま余裕になります。厚めに切ってしまった日、量を詰め込んだ日、人に食べてもらう日。最後に温度を上げて、加熱の工程をもう一度きっちり通せる。乾燥機を低温オーブンとして使う形です。フライパンや魚焼きグリルに移す必要がないので、手順も増えません。

毎回使う機能ではありません。それでも「迷ったら上げればいい」と言えるかどうかで、判断はずいぶん楽になります。ジビエを人に食べてもらう立場だと、この一点はかなり大きい。

3. 出来上がりは、温度計ではなく肉の状態で見る

ここは正直に書いておきます。ジャーキーに中心温度計は刺せません。数ミリの厚さの肉に刺しても、測っているのはほとんど庫内の空気です。肉の塊なら温度計が正解ですが、ジャーキーは肉の状態で見ます。私が目安にしているのは、この4つです。

  • 冷ましてから判断する。これがいちばん大事です。温かいうちは、乾いていても柔らかい。直後に「まだかな」と思って戻すと、たいてい乾かしすぎになります
  • 曲げると表面に細かいひびが入る。ただしポキンとは折れない。折れるのは乾かしすぎ、しなるだけなのはまだ早い、その間です
  • 切って、中心に生の赤みが残っていない。断面に白い繊維が見えていれば水分が抜けています
  • 押しても水分がにじんでこない。にじむなら庫内に戻します

厚みがあると、この目安は当てになりません。厚く切った肉は表面だけ乾いて中心が生のまま残ります。ジャーキーは「薄く切る」ことが安全側の条件そのものです。厚くなってしまった日は、乾燥のあとに温度を上げて加熱し直してください。庫内の表示温度は空気の温度で、肉の中心温度ではありません。

4. 温度の幅が、そのまま用途の幅になる

この機械は30℃から90℃まで5℃きざみ、タイマーは24時間まで。買う前は「幅があっても真ん中しか使わないだろう」と思っていましたが、実際には端のほうから使い道が増えました。

  • 犬のおやつ。うちの犬にもやっています。味をつけずに、薄く切って乾かすだけ。人間用と同じ肉から作れるので、わざわざ買う必要がありません(塩や調味料は入れません。玉ねぎ・にんにくの類は犬に与えてはいけません)
  • 野菜と果物。もらいものが多くて食べきれない時期に効きます。乾かしてしまえば場所も取りません
  • 麹の甘酒。これが思わぬ収穫でした。甘酒は60℃前後を保つ必要があって、鍋や保温だと温度が上下します。この機械なら温度を設定して放っておくだけ。乾燥機で作るものだとは思っていませんでした

猟期にしか使わない道具は、だんだん出さなくなります。ジビエ用に買った機械が一年中回っているのは、道具として健全な状態だと思っています。

5. ステンレスであることが、肉を扱うと効いてくる

肉を乾かすと、庫内に匂いと脂がつきます。果物しか乾かさないなら気にしなくていい部分ですが、ジビエをやるなら正面から当たります。この機械は本体もトレイも食品グレードのステンレス(SS304)で、樹脂のように熱で歪んだり匂いが染みついたりせず、丸洗いできます。90℃まで上げる使い方をするなら、この材質は前提のようなものです。

もうひとつがトレイの段数です。乾燥は時間のかかる作業なので、効いてくるのは「1回で何枚並べられるか」。2段の機械で3回に分ければ、単純に3倍かかります。解体した日にモモをまとめて仕込んで、あとは放っておく。この機械は6段で、背面のファンで熱風を回すので上下の差も出にくくなっています。

実際に使っているKwasyoのステンレス製フードドライヤー。前面がガラス窓になっていて、庫内の奥に熱風を回すファンが見える
ジビエを旨く食う

Kwasyo 6層フードドライヤー ステンレス鋼製食品乾燥機(LT-28)

ジビエ用として売られている機械ではありませんが、鹿肉のジャーキーを作るなら、これが無いと始まりません。普段は70℃で回しています。それで十分です。それでも90℃まで出せることが安心につながる——厚く切った日や人に食べてもらう日に、仕上げで温度を上げられるからです。犬のおやつも、野菜も、麹の甘酒も同じ一台。間食を買って帰ることが無くなりました。

トレイ6段 / 温度 30〜90℃(5℃きざみ) / 24時間タイマー / 400W / 食品グレードSS304ステンレス(本体・トレイ) / 熱風循環ファン / 品番 LT-28 / 中国製(すべてメーカー公表値)

6. 買う前に知っておいたほうがいいこと

万能ではありません。先に知っておきたかったと思うことを並べます。

  • とにかく時間がかかります。「思い立って30分後に食べる」道具ではありません。仕込んで放っておく前提の機械です
  • 場所を取ります。電子レンジくらいの箱が台所に増えます。しまい込むと使わなくなるので、置き場所は先に決めたほうがいいです
  • 殺菌装置ではありません。温度と時間を管理するのは自分です。薄く切ること、迷ったら温度を上げること
  • 安い買い物ではありません。1万円台の後半です。年に数回しか使わないなら高い。肉が定期的に手に入る人向けの道具です

まとめ

  • 基準は「75℃1分以上、またはこれと同等以上」。同等の中身は温度と時間の組み合わせで、70℃なら3分、63℃なら30分。だから70℃で十分です
  • ジャーキーに中心温度計は刺せない。冷ましてから、曲げたときのひび・断面の色・にじむ水分で見る。薄く切ることが、そのまま安全側の条件になります
  • 90℃はその上に置く余裕。厚く切った日や人に出す日に、仕上げで上げられる。温度の幅は、犬のおやつから麹の甘酒まで、そのまま用途の幅になります

いま、冷凍庫のモモ肉はいちばん先に減っていく肉になりました。夜に小腹が空いても、買いに出る理由がない。山から下ろした肉が、そのまま毎日の間食になっているという状態は、獲る側にとって、思っていたよりずっと気分のいいものでした。

注意していただきたいこと

  • 野生鳥獣の肉は、中心部を75℃で1分間以上、またはこれと同等以上(70℃で3分、63℃で30分など)加熱してください。生食・半生は絶対に避けてください。本記事の温度と時間は内閣府食品安全委員会が示している条件です
  • 厚く切った肉は、表面が乾いても中心に火が通っていないことがあります。薄く切ってください。庫内の表示温度は空気の温度であって、肉の中心温度ではありません
  • 作ったジャーキーは常温で長期保存できるものとして扱わないでください。冷蔵または冷凍で保存し、早めに食べきってください。異臭・カビ・ぬめりがあるものは食べないでください
  • 犬に与える場合は味付けをしないでください。玉ねぎ・にんにく類は与えてはいけません。塩分の多いものも避けてください。持病のある子や与える量については、かかりつけの獣医師に相談してください。ペットフードを販売・配布する場合は愛玩動物用飼料安全法(ペットフード安全法)の対象になります
  • 捕獲した個体の肉を販売する場合は、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可が必要です。人にあげる場合も、処理の経緯と加熱の必要性を必ず伝えてください
  • 狩猟は、狩猟免許および狩猟者登録を受けたうえで、鳥獣保護管理法その他の関係法令および各都道府県の定めるルールの範囲内で行ってください
  • 温度・時間・お手入れの方法は、必ず製品の取扱説明書に従ってください。仕様はメーカー公表値で、価格や内容は時期によって変わることがあります
  • 本記事は運営者個人の使用記録であり、特定の道具や方法の効果を推奨・保証するものではありません

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