冷凍庫に、もらった鹿肉が入ったままになっていないでしょうか。
いつまで置いていいのか分からない。どう解凍するのか分からない。火はどこまで通せばいいのか分からない。調べると「臭い」「硬い」と出てくる。せっかくもらったのに、手が出せないまま何か月か経っている。
渡す側にいるので、その気持ちはよく分かります。私も最初、人からもらった肉をどう扱えばいいのか分かりませんでした。
ただ、いま言えるのは難しくないということです。届いた日に3つやっておけば、あとは牛肉や豚肉と同じように扱えます。牛乳に漬ける必要も、酒で洗う必要もありません。特別な調味料も要りません。塩と胡椒で焼いて成立します。
気をつけるのは火の入れ方だけです。そこだけは、はっきりした基準があります。
結論:届いた日にやるのは3つだけ
- 一度に食べる分に小分けする
- 空気を抜いて包み、すぐ冷凍する
- いつもらった肉か書いて貼る
これだけです。食べるときは冷蔵庫で解凍して、中心まで火を通す。以上で、あの肉はちゃんとおいしく食べられます。
1. 届いた日にやる3つ
小分けにする
いちばん大事なのがこれです。一度解凍した肉は、冷凍に戻せません。
大きな塊のまま凍らせると、食べたい日に「今日は300gでいいのに、700gある」という状況になります。そこで無理に半分だけ切ろうとして、結局ぜんぶ解かすことになる。1回で使い切れる量に分けておけば、この事故は起きません。
目安は、1袋につき1〜2人分。迷ったら小さめに分けてください。足りなければ2袋出せばいいだけです。
空気を抜いて包む
冷凍で味が落ちる原因の大半は冷凍焼けです。肉の表面から水分が抜けて、そこが乾いて変色します。パサつきと匂いの元になります。
原因は肉と包装のあいだに残った空気なので、そこを抜けば防げます。
- ラップで肉に密着させて包む。ふんわり包まない
- その上からフリーザーバッグに入れ、口を少しだけ開けて空気を押し出してから閉じる
- 平らにして凍らせる。厚みがあると凍るのも解けるのも遅くなります
真空パック機があればいちばん確実ですが、無くてもここまでやれば十分に違います。
日付を書いて貼る
地味ですが、これが無いと結局それが「手を出せない肉」になります。
いつもらったかが分かれば、順番に食べられます。安全性より先に、味が落ちていきます。家庭用の冷凍庫は開け閉めのたびに温度が上下するので、業務用のようにはもちません。早めに食べるためのメモだと思ってください。
2. 解凍は冷蔵庫で。常温には出さない
食べる前日に、冷凍庫から冷蔵庫へ移します。それだけです。
- 常温に出して解凍しない。表面だけが先にぬるくなります
- 水につけない。味が抜けます。急ぐなら袋のまま氷水に
- 出てきた汁(ドリップ)は拭き取る。そのまま焼くと水っぽくなります
- 解けたら再冷凍しない。品質も衛生も落ちます。だから小分けが効いてきます
3. 火の入れ方だけは、妥協しない
ここがこの記事の本題です。
鹿肉をはじめとする野生鳥獣の肉は、中心部を75℃で1分間以上(またはこれと同等以上)加熱する必要があります。厚生労働省が示している基準です。
これは味の話ではなく、安全の話です。E型肝炎ウイルスや寄生虫のリスクがあるため、生食や半生は避けてください。飲食店で見るロゼ色の仕上がりを、家庭で真似しないでください。
鹿肉・猪肉の生食、および半生の加熱は避けてください。中心部75℃1分間以上(またはこれと同等以上)の加熱が必要です。「新鮮だから生で食べられる」ということはありません。鮮度と、ウイルスや寄生虫のリスクは別の話です。
見た目で判断すると外します
表面がしっかり焼けていても、中心が届いていないことがあります。逆に、色を待ちすぎて入れすぎ、硬くパサパサになることもあります。鹿肉は脂が少ないので、入れすぎるとすぐ硬くなります。
だから、数字で見るのがいちばん早い。温度計をいちばん厚いところに刺すだけです。

刺す場所さえ合っていれば、判断に迷いません。安全側にも、うまさの側にも、どちらにも外さなくなります。
ドリテック クッキング温度計(防水・デジタル)
私が使っているのは廃番になった前の型で、これは同じドリテックの現行品です。やることは単純で、いちばん厚いところに刺して中心が75℃を超えているかを見るだけ。もらった肉は部位も厚みも分からないことが多いので、勘で決められません。ここを数字にできると、鹿肉が「怖い肉」ではなくなります。
4. やらなくていいこと
「鹿肉 下処理」で調べると出てくるもののうち、ちゃんと処理された肉には要らないものがあります。
- 牛乳に漬ける
- 酒や酢で洗う
- 香りの強いハーブで覆う
どれも臭い肉を食べるための工夫です。臭くない肉にやると、その肉にしかない味まで一緒に消えます。
まずは塩だけで焼いて、一切れ食べてみてください。それで平気なら、下処理は要りません。
もし本当に匂いが気になったなら、それはあなたの料理の問題ではなく、山での扱いの問題です。そのあたりは鹿肉が臭いのは肉のせいじゃないに書きました。次にもらうときの参考になるはずです。
5. 部位が分からないときは
もらった肉は、たいてい「鹿肉」としか言われません。でも鹿肉は部位ごとに別の肉で、同じ焼き方をすると失敗します。
- 赤くてきめが細かく、細長い塊 → ロース。焼く
- 大きくて厚みがあり、表面に薄い膜 → モモ。薄く切る
- 白い筋が何本も走っている → スネ・ネック。煮る
判断がつかなければ、薄く切って焼いてください。どの部位でも大きな失敗になりにくい選び方です。
まとめ
- 届いた日に、小分け・空気を抜く・日付を貼る。あとで困らないための3つ
- 解凍は冷蔵庫で。再冷凍しない。だから小分けが効く
- 中心75℃1分以上だけは妥協しない。いちばん厚いところの真ん中で測る
ここまでやれば、鹿肉は「もらったけど困るもの」ではなくなります。冷凍庫を開けたときに、今日はこれにしようと思える。それがいちばん大きい変化だと思います。
肉を渡した側としては、そうやって食べてもらえるのがいちばんうれしいところです。
注意していただきたいこと
- 野生鳥獣の肉は、中心部を75℃で1分間以上(またはこれと同等以上)加熱してください。生食・半生は避けてください
- 解凍した肉の再冷凍は、品質・衛生の両面で避けてください
- 調理器具や手指は、生肉に触れたあと必ず洗浄してください。他の食材への二次汚染を防ぐためです
- 体調に不安のある方、妊娠中の方、小さなお子さんは、加熱をとくに十分に行ってください
- ジビエを販売する場合は、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可が必要です







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