掛けても、掛からない。
毎日見回って、どの罠も落ち葉が乗ったまま。そういう時期が私にもありました。そうなると考えることは決まっていて、基数が足りないのか、それとも罠そのものが悪いのか、のどちらかです。私は基数を増やすほうへ行きかけました。
結果から言うと、変えたのは罠ではありませんでした。掛ける場所と、埋め方と、掛け終わったあとの最後の確認。この3つを詰めたら、基数は10〜15基のまま、掛かる頻度が上がりました。
いちばん変わったのは、掛からなかった日に「なぜ掛からなかったか」の見当がつくようになったことです。以前は運が悪かったで終わっていました。いまは、場所か、埋め方か、通られ方か、のどれかに絞れます。絞れると、次に直すところが決まります。
結論:掛かる確率は「踏ませ方」で動く
- 通るしかない場所を選ぶ。けもの道の上ならどこでもいい、ではない
- 深めに掘って、周りと同じ顔にする。掘った跡が残っていると、避けて歩かれる
- 掛け終わったら、金具を指で触って確認する。閉め忘れは、掛かったあとに効いてくる
罠の性能の話ではありません。どれも、獣にどう踏ませるかの話です。
1. 場所|けもの道の「狭くなっている所」を探す
まず、けもの道を探すところから始まります。落ち葉と下草の斜面に、繰り返し通って一本の筋になっているところがあります。

ここで終わらせないことが大事です。けもの道には幅があります。獣は毎回まったく同じ一点を踏むわけではないので、道の上に置いただけだと、脇を通られて終わります。
私が選んでいるのは、その道の中で狭くなっている場所です。倒木と藪ではさまれている、斜面で足を置ける場所が限られている、ここを通るしかない、という所。言い方を変えると、獣の選択肢が少ない場所ほど、踏む確率が上がります。

掛からない時期の私は、道を見つけた時点で満足していました。探す対象が「道」から「道の中の一点」に変わってから、結果が変わりました。ここを外すと、後述の工夫は全部効きません。
2. 埋め方|浅いと弾かれる。掘った跡が残ると避けられる
場所を決めても、しばらくは空はじきが続きました。作動しているのに掛かっていない、というやつです。
私が変えたのは2つです。
- 深めに掘る。浅く据えると、踏まれたときに逃げが出ます
- カモフラージュを詰める。掘った土を残さない、元の落ち葉を戻す、周りと同じ顔にする
あとから効いていると感じるのは、2つめのほうです。掘った跡や新しい土がそのままだと、獣はそこだけよけて歩きます。掛からない理由が「踏まれていない」なのか「踏まれたが外れた」なのかは、周りの跡を見れば分かることがあります。よけた跡が付いていたら、埋め方の負けです。
どのくらい深く掘るかは、地面と対象で変わります。数字で覚えるものではなく、現場ごとに合わせるものだというのが、いまの私の理解です。
3. 最後の確認|シャックルの閉め忘れは、掛かってから効いてくる
これは失敗の話です。私はシャックルを閉め忘れたことがあります。
掛かるまでは、閉め忘れていても何も起きません。問題が出るのは掛かったあとで、最悪の場合はワイヤーを付けたまま獣を逃がすことになります。獣にとっても、あとで見つける人にとっても、いちばん起きてほしくない形です。
それ以来、掛け終わったら必ず、手で1か所ずつ触って確認しています。より戻し、締め付け防止金具、シャックル、支点への固定。目で見るだけだと、閉まっているように見えます。指で触ると、閉まっていないものは分かります。
この工程は、慣れるほど飛ばしたくなります。掛ける本数が増える日ほど危ないので、私は最後に必ずここへ戻るようにしています。
4. 私が使っている罠の構成と、法令で決まっていること
私はくくり罠を自作しています。構成はこうです。
- ワイヤーは4mm
- より戻し・締め付け防止金具を装着
- 押しバネ。安全性を優先して選んでいます
- 踏み板は自作。塩ビ管はホームセンターで買っています
この構成は好みではなく、法令の基準に合わせたものです。イノシシ・ニホンジカを捕獲する目的でくくり罠を使う場合、国の基準では次のものが使えません。
- 輪の直径が12cmを超えるもの
- 締め付け防止金具を装着していないもの
- より戻しを装着していないもの
- ワイヤーの直径が4mm未満のもの
あわせて、わなには法定の標識を付ける必要があります(氏名・住所・電話番号・登録した都道府県・登録番号)。自作でも市販でも、ここは同じです。
数字は都道府県で変わります。くくり罠の構造の規制は、対象とする獣と地域によって上乗せや特例があり、同じ「12cm」でも扱いが違うことがあります。必ず、自分が登録した都道府県の最新の定めを確認してください。この記事の数字を、そのまま自分の地域の基準として使わないでください。
5. 基数を増やすより、見きれる数にする
昨シーズンは10〜15基を掛けていました。見回りは基本、毎日です。
掛からない時期は基数を増やしたくなりますが、増やすと見回りが回らなくなります。見回りが遅れて困るのは自分ではありません。掛かった獣を待たせることになりますし、外れて逃げられる時間も、錯誤捕獲に気づくのが遅れる時間も、そのぶん延びます。
だから私は、掛けられる数ではなく、毎日見て回れる数で決めています。場所と埋め方を詰めるようになってからは、増やす必要も感じなくなりました。

6. 消耗品は毎年減る。どこで買っているか
ワイヤーをはじめ、罠まわりの部材は毎年買い足しています。掛け直すたびに減っていく前提の道具なので、1本あたりの値段がそのまま、翌シーズンに掛けられる基数に効いてきます。
私が買っているのは日本一安い罠の店です。どこで買っているのかは実際によく聞かれるので、そのまま書いておきます。
7. 自作の作業でも、手袋は着けている
踏み板を作る、塩ビを切る。罠の準備には刃物とのこぎりを使う工程があります。
私はここでも防刃手袋を着けています。解体で使っているものと同じで、刃を持たない側の手に着けます。滑っても皮膚まで届かないと分かっていると、作業が速くなります。迷いながら力を入れるほうが、かえって滑るからです。

猟期前の準備は、罠を作る本数ぶんだけ同じ作業を繰り返します。1本目より、疲れてきた最後の数本のほうが危ない。着けたまま作業できるものを1双持っておくと、そこで手が止まりません。
Schwer SlicePro 防刃手袋 PR1501(レベル9耐切創)
解体でも罠の自作でも、刃を持たない側の手にだけ着けている。両手に着けると厚みで刃の角度が分からなくなるので片手だけ。食品グレードで洗って繰り返し使えるので、肉に触れる作業とのこぎり作業を1双で兼ねられている。
耐切創手袋を着けていても、突き刺す事故は防げません。繊維が強いのは刃を横に滑らせる力に対してで、刃先が縦に入ると繊維の目を割って通ります。刃物を体のほうへ引かない、押さえている手の前方に刃を向けない、という基本は着けていても変わりません。
効く力と効かない力の違いは、勢い余って手を切ってから、防刃手袋を着けているで図にして説明しています。
まとめ
- けもの道を見つけて終わりにしない。その中の、通るしかない一点まで絞る
- 掘った跡を残さない。よけて歩かれていたら、埋め方の負け
- 掛け終わりに、金具を指で触る。閉め忘れは掛かってから効いてくる
基数を増やさずに済んでいるのが、いまのいちばんの変化です。掛からない日にも、場所か埋め方か通られ方かのどれかに見当がつくので、次に直すところが決まります。運の話が減って、手を入れる話になりました。
掛かってからの流れは、鹿肉が臭いのは肉のせいじゃないにまとめてあります。止め刺しから冷やすまでを速くできるかどうかで、肉の味は変わります。
注意していただきたいこと
- わなの使用にはわな猟免許と狩猟者登録が必要です。鳥獣保護管理法および各都道府県の定めるルールの範囲内で行ってください
- くくり罠の構造の基準(輪の直径・締め付け防止金具・より戻し・ワイヤー径)は、対象とする獣と地域によって異なります。登録した都道府県の最新の定めを必ず確認してください
- わなには法定の標識の装着が必要です
- わなの見回りの頻度は、各都道府県の指導に従ってください
- 目的以外の動物が掛かった(錯誤捕獲)ときは、自分で対処せず、速やかに自治体の担当窓口へ連絡してください
- 刃物の携帯・運搬・保管は、銃砲刀剣類所持等取締法および軽犯罪法に従ってください
- 耐切創手袋は切創のリスクを下げるものであり、怪我をしないことを保証するものではありません
- 野生鳥獣の肉は、中心部を75℃で1分間以上(またはこれと同等以上)加熱してください。捕獲した個体の肉を販売する場合は、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可が必要です
- 本記事は運営者個人の使用記録であり、特定の方法や道具を推奨・保証するものではありません



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