止め刺しをして、担いで下りて、車まで戻ってくる。そこで毎回、少し立ち止まっていました。
手は血と泥で汚れています。長靴も同じです。ナイフも汚れたまま。でも山に水道はありません。
このまま運転席に座れば、ハンドルにもシフトレバーにもシートベルトにも、それが移ります。かといって、洗える場所まで汚れた手で運転していくことになる。どちらを選んでも気持ちのいいものではありませんでした。
いまは、車まで戻ったらその場で手と長靴を流してから運転席に座っています。軽トラの中が汚れません。やったことは、園芸用の蓄圧式スプレーを1本、荷台に積んでおくだけです。718円でした。
結論:足りなかったのは水ではなく、圧だった
水を持っていくだけなら、ペットボトルでもポリタンクでもできます。私が詰まっていたのは、そこではありませんでした。
傾けて出てくる水は「かける」であって、「流す」にはなりません。血や脂は、当てる勢いがないと表面を滑るだけで落ちてくれない。そのうえ容器を持つほうの手が塞がるので、結局どちらか片方の手しか洗えません。
蓄圧式のスプレーは、先にポンプで空気を押し込んでおけば、あとはレバーを押すだけで水が出続けます。片手が自由になって、水に勢いもある。探していたのはこれでした。
1. 山に持ち込む道具ではなく、車に置いておく道具
まず、これは担いで山に入る道具ではありません。
タンクは2リットルで、本体そのものは260グラムです。ただし水を満タンにすれば、当然2キロ強になります。罠の見回りでこれを腰に下げる理由はどこにもありません。
使うのは「作業が全部終わって、車まで戻ってきて、乗る直前」の一瞬だけです。だから置き場所は荷台か、助手席の足元でいい。持ち運ぶ道具ではなく、待っている道具だと考えたほうが、置き場所を間違えません。
この割り切りができてから、道具を増やした感覚がなくなりました。山に持っていくものは1つも増えていないからです。山で担ぐものを1つでも減らしたい話は、鹿の解体、ナイフは何本要るのかにも書きました。
2. 霧とジェットを切り替えられることの意味
ノズルを回すと、霧状と直線のジェットを切り替えられます。この2つは用途がはっきり分かれました。
- ジェット……長靴の泥、ナイフ、手にこびりついたもの。落とすための水
- 霧状……手をひととおり流したあとのすすぎ。濡らすための水
全部ジェットで済ませようとすると、2リットルはあっという間になくなります。逆に霧状だけでは、乾きかけた血は落ちません。落とす工程と、すすぐ工程を分けると考えると、水の減り方が変わります。
タンクには250cc刻みの目盛が付いています。地味ですが、これが効きます。残りがひと目で分かるので、次に出かける前に足しておけばいい。現場に着いてから空だと気づくのが、この手の道具で一番やりたくない失敗です。
3. 使っているもの
園芸コーナーに置いてある、ごく普通の蓄圧式スプレーです。狩猟用と書かれた道具ではありません。
高儀 蓄圧式ガーデンスプレー ハンドヘルド 2L GHSN-2C
軽トラに積みっぱなしにして、山から戻ってきたら手と長靴を流している。レバーを押すだけで水が出続けるので、片手が空く。ノズルで霧とジェットを切り替えられて、落とす用とすすぐ用を使い分けられる。ノズルだけ真鍮。
タンク容量2リットル、本体重量260グラム、目盛は250cc間隔。ボトルがポリエチレン、本体がポリプロピレン、ノズルが真鍮です。1リットルのタイプもありますが、私が使っているのは2リットルのほうです。
ここで正直に書いておくと、この道具を選んだ理由に「猟に向いているから」はありません。手が届く値段で、水に圧をかけられて、車に放り込んでおける。条件はそれだけでした。狩猟用と銘打った道具でなくても現場が回ることは、けっこうあります。
4. これで足りていないこと
良かったところだけ書いても仕方がないので、埋まっていない部分も書いておきます。
- これ1本では洗いきれません。出るのは水だけなので、脂を落とすには石けんが要ります。石けんは別に持っていっています。洗うのが石けん、流すのがこれ、という分担です
- 冬にどうなるかは、まだ分かりません。これから猟期です。中の水が凍るのか、使い終わりに抜いておけば済むのか、一冬使ってみないと書けません
- 2リットルが何回分かは、使い方しだいです。ジェットばかり使えば短いし、すすぎ中心なら長くもつ。私は毎回きっちり量っているわけではないので、ここは数字を出しません
それでも、汚れた手のまま運転席に座らなくていいという一点だけで、718円ぶんはとっくに戻っています。
ついでに変わったこと
思っていなかった効果がひとつありました。現場で手を洗えるようになると、肉の扱いが少し丁寧になります。
汚れた手のままだと、どうしても作業が雑に、早く終わらせる方向に寄っていきます。途中で一度流せると分かっていると、そこが変わる。山での扱いがそのまま味に出る話は鹿肉が臭いのは肉のせいじゃないに書いたとおりで、手を洗える環境は、衛生の話であると同時に肉の話でもあります。
手を守る側の道具は防刃手袋にまとめています。手袋で守って、終わったら流す。この2つはセットで回っています。
まとめ
- 山に水道はない。足りないのは水の量ではなく、水に圧をかけて流せることだった
- 担いで持ち歩く道具ではなく、車に置いておく道具。だから2リットルでも重さは問題にならない
- ジェットで落として、霧状ですすぐ。分けて使うと2リットルが足りる
作業が終わって、手を流してから運転席に座る。それだけのことですが、車の中が汚れないというのは、思っていたよりずっと気分がいいものでした。
注意していただきたいこと
- 本記事は運営者個人の使用記録であり、製品の性能を保証するものではありません。用途・用法は製品の取扱説明書に従ってください
- 狩猟は、狩猟免許および狩猟者登録を受けたうえで、鳥獣保護管理法その他の関係法令および各都道府県の定めるルールの範囲内で行ってください
- 刃物の携帯については、銃刀法および軽犯罪法の定めに従ってください
- 捕獲した個体を食用にする場合は、食品衛生法その他の関係法令に従ってください

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